PLAMAX ヴェルビン　

マックスファクトリーの「PLAMAX ヴェルビン」は、オーラバトラー造形史における重要な成果といえる。本キットで立体化されたヴェルビンは、『聖戦士ダンバイン』の外伝的企画「オーラ・ファンタズム」（B-CLUB誌上のイラストストーリー）に登場する機体であり、いわば“幻のオーラバトラー”として長らくファンの憧憬を集めてきた。出渕裕氏のデザインによるそのフォルムは、従来のオーラバトラー以上に有機的かつ妖艶で、昆虫的なシルエットと重厚な存在感を兼ね備えている。

この造形をプラモデルとして具現化したのが、造形家・毒島孝牧（ブスジマックス）氏である。ガレージキット黎明期から活躍する氏は、「生物感」と「機械感」を融合させる独自の造形表現で高い評価を得てきた。本キットにおいてもその持ち味は存分に発揮され、筋肉質な曲面と鋭利なエッジが織りなす立体構成は、ヴェルビンが纏う妖しさと威厳を見事に再現している。

成型色は複数に分割されており、未塗装でも見栄えを確保する一方、塗装仕上げを施すことでさらに造形の奥行きを引き出せる設計となっている。付属のオーラソードは抜刀・収納を選択可能で、展示表現に変化をもたらす。ただしキット全体は固定ポーズ仕様に割り切られており、可動性を求める層には制約がある。しかしその選択によってシルエットの完成度は格段に高められ、造形作品としての純度が際立つ。

総じて「PLAMAX ヴェルビン」は、オーラ・ファンタズムが生んだ幻の機体を現代のプラスチックモデル技術で結実させた意欲作である。毒島氏の造形哲学とマックスファクトリーの技術が融合した本作は、キャラクターモデルを超えた“造形美の標本”として、オーラバトラーファンのみならず造形芸術を愛するモデラーにとっても必携の一作となるだろう。（文/斎藤模型店のカメラマン）